こんにちは、かぴ男です。エアラインパイロット10年やってました。
ニュースでよく「航空事故に認定されました」とか、「重大インシデントに認定されました」とか、報道されます。実は、航空事故と重大インシデントでは、事の重大さが全く違います。どの位違うかと言うと、オリンピックの金メダルと入賞くらい違います。
本記事では、マニア向けに、飛行機アクシデントのクラス分けについて、ご説明します。
本記事を読めば、航空ニュースがもっと楽しくなり、航空マニア仲間にドヤ顔できます。
飛行機アクシデント3つに分類される
結論から言います。
飛行機アクシデントは、やばさの度合いによって3つに分類されます。
- めちゃやばい → 航空事故
- 結構やばい →重大インシデント
- ちょっとやばい →イレギュラー運航
よくニュースとかで、「航空事故に認定されました」とか、「重大インシデントに認定されました」と言うのは、そのアクシデントのヤバさの度合いを国土交通省が決めているのです。
ですので、ニュースで、”航空事故”と聞いたたら、「めちゃやばいことが起こった!」など、内容を聞かなくても、アクシデントのヤバい度合いがわかるのです。
マニア向けに、それぞれの詳細を見ていきましょう。実はこれ、現役のパイロットでもわからない人が多いです。あなたは、どこまでついてこれるでしょうか。
航空事故
航空事故とは、航空法76条に定められているアクシデントを言います。
まぁ、簡単に言うと、”めちゃやばいアクシンデント”です。
航空法76条
一 航空機の墜落、衝突又は火災
二 航空機による人の死傷又は物件の損壊
三 航空機内にある者の死亡(国土交通省令で定めるものを除く。)又は行方不明
四 他の航空機との接触
五 その他国土交通省令で定める航空機に関する事故
例えば、
- 2001年 アメリカン航空 同時多発テロ
- 1983年 JAL 123便墜落事故
事故と言うと、飛行機の損傷が伴うことだけと思われますが、実はCAの負傷も航空事故に入ります。さらに言うと、そのCAの負傷の度合いで、航空事故か重大インシデントかに分類されます。
面白い話なのですが、骨折は航空事故なのですが、捻挫は航空事故に入りません。
日本の航空事故は、運輸安全委員会のHPで確認することができます。僕がパイロット現役だった時、審査前は必ず最近の航空事故をチェックしていました。
重大インシデント
重大インシデントとは、航空法第76条の2に定められている「航空事故が発生するおそれがあると認められる事態」です。
まぁ簡単に言うと、「結構やばいアクシデント」です。
航空法および施行規則を引用しますが、マニア以外は、読み飛ばしてOK。
航空法 第76条の2
機長は、航行中他の航空機との衝突又は接触のおそれがあつたと認めたときその他前条第一項各号に掲げる事故が発生するおそれがあると認められる国土交通省令で定める事態が発生したと認めたときは、国土交通省令で定めるところにより国土交通大臣にその旨を報告しなければならない。
航空法施行規則166条の4
(事故が発生するおそれがあると認められる事態の報告)
法第七十六条の二の国土交通省令で定める事態は、次に掲げる事態とする。
一 閉鎖中の又は他の航空機が使用中の滑走路からの離陸又はその中止
二 閉鎖中の又は他の航空機が使用中の滑走路への着陸又はその試み
三 オーバーラン、アンダーシュート及び滑走路からの逸脱(航空機が自ら地上走行できなくなつた場合に限る。)
四 非常脱出スライドを使用して非常脱出を行つた事態
五 飛行中において地表面又は水面への衝突又は接触を回避するため航空機乗組員が緊急の操作を行つた事態
六 発動機の破損(破片が当該発動機のケースを貫通した場合に限る。)
七 飛行中における発動機(多発機の場合は、二以上の発動機)の継続的な停止又は出力若しくは推力の損失(動力滑空機の発動機を意図して停止した場合を除く。)
八 航空機のプロペラ、回転翼、脚、方向舵だ、昇降舵だ、補助翼又はフラップが損傷し、当該航空機の航行が継続できなくなつた事態
九 航空機に装備された一又は二以上のシステムにおける航空機の航行の安全に障害となる複数の故障
十 航空機内における火炎又は煙の発生及び発動機防火区域内における火炎の発生
十一 航空機内の気圧の異常な低下
十二 緊急の措置を講ずる必要が生じた燃料の欠乏
十三 気流の擾じよう乱その他の異常な気象状態との遭遇、航空機に装備された装置の故障又は対気速度限界、制限荷重倍数限界若しくは運用高度限界を超えた飛行により航空機の操縦に障害が発生した事態
十四 航空機乗組員が負傷又は疾病により運航中に正常に業務を行うことができなかつた事態
十五 物件を機体の外に装着し、つり下げ、又は曳航している航空機から、当該物件が意図せず落下し、又は緊急の操作として投下された事態
十六 航空機から脱落した部品が人と衝突した事態
十七 前各号に掲げる事態に準ずる事態
例えば、
- 2020年 JAL エンジン故障
- 2019年 PEACH進入中に滑走路に車両
日本の重大インシデントは、運輸安全委員会のHPで確認することができます。僕がパイロット現役だった時、審査前には必ず最近の重大インシデントをチェックしていました。
イレギュラー運航
イレギュラー運航とは、航空機の不具合のうち、緊急を要するものでないアクシデントです。
まぁ、簡単に言うと、「ちょっとやばいアクシデント」。
イレギュラー運航とは、航空機の多重システムの一部のみの不具合が発生した場 合等に、乗員がマニュアルに従い措置した上で、万全を期して引返し等を行った結 果、目的地等の予定が変更されるものです。一般的には、直ちに運航の安全に影響 を及ぼすような異常事態ではありません。(航空輸送の安全にかかわる情報)
次のような場合が、イレギュラー運航にあたります(ただし、航空事故又は重大インシデントに該当したものを除く)。
1.離陸後に目的地を変更した場合(※1)
2.出発地に引き返した場合(※1)
3.航空交通管制上の優先権を必要とする旨を通報した場合(※1)
4.航空機が他の航空機又は物件と接触した場合
5.航空機が滑走路から逸脱した場合
6.滑走路を閉鎖する必要があるような運航があった場合(※2)
※1:機材の不具合等によるものに限る。
※2:滑走路点検のために閉鎖するものを除く。参照:国土交通省
例えば、
- 2017年 ANA 油圧計のトラブル 那覇引き返し
- 2021年 PEACH GPWSの不具合 関空にダイバード
日本のイレギュラー運航は、運輸安全委員会のHPで確認することができます。
まとめ
航空事故・重大インシデント・イレギュラー運航、これら知ってるあなたは、オタク決定。仲間にドヤ顔できます。また、これらを知ってるだけで、航空ニュースが面白くなりますね。
これからも、航空会社・パイロット・CAのこと、惜しみなく情報発信してきます。
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最近は、質問が多いので、お時間かかるしれませんが、必ずお答えしてきます!
では。
おわり。